東京高等裁判所 昭和55年(行ケ)137号 判決
事実及び理由
原告が主張する審決取消事由の存否について検討する。
1 まず、原告は、主光源の下方に非常用光源を配置する構成に想到することは困難である旨主張する。そこで、
成立に争いのない甲第二号証の一ないし四、第四号証、第五号証に弁論の全趣旨を総合すると、つぎのとおり認められる。
すなわち、本願考案のように、筒形本体内に主光源と非常用光源とを設ける場合、その二種の光源の位置関係を大別すれば、これらを上下に配置するか、横に並べて配置するかのいずれかとなり、主光源と非常用光源とを同一容器内に収納した常用、非常用兼用の照明器具である第一引用例のものは、二種の光源の位置関係が上下であることに徴しても、二種の光源の位置関係として上下の配置を選択すること自体には格別の考案は認められない。ところで、第二引用例には、天井面などに埋設する埋込み型照明器が記載されているから、下端に開口部を有する器具本体の内部に前記の第一引用例に示されているような主光源と非常用光源とを上下に併設して収容すること自体、必要に応じ、当業者であれば容易に推考できるところといわねばならないし、また、二つのものについてどちらを上にするかの上下の関係の二つのうちの一つの選択についても、第一引用例、第二引用例の各実施例に示された、光源の取付部である電灯のソケツト部に着目すれば、主電灯のソケツト部との関係では、第一引用例に記載された実施例(第一図、第三図(〔編註〕省略)参照)におけるソケツト部を含んだ環状ケース部を、下端に開口部を有する器具本体に収容するため、その天井部にそのまま埋設した場合の、自然な位置関係にすぎないところの、主光源の下方に非常用光源を配置する構成もまた、主光源と非常用光源との照度の差及び下方に開口部を有するダウンライトの器具本体の中での非常用光源のみによる非常灯の使用を予定する技術的要請を考え合せれば、当業者として容易に想到することができるものということができる。
原告は、非常用光線を主光源の下方に配置することに想到するについての困難性の主張の根拠の一として、光源から被照面の方向に放射される光線の途中に物体を設置してその照明を減殺するようなことは、照明技術の常識から避けねばならないことであるという。しかしながら、仮に、右上下関係の他方の選択として、主光源の上方に非常用光源を配置した場合には、非常用光源が、非常灯より照度の大きいところから、かなり大型とならざるをえない主光源の後方に存在することとなり、まさに原告のあげる理由から、その照度が相当程度減殺されて、非常灯の使用について影響が生ずるものとみられる。これに対し、主光源の下方に設置することによる非常灯の照明度の減殺は、非常用光源が、常時ダウンライトとして使用される主光源に比べその照度等についてかなり小型のもので足りるのが当然であることを前提にすると、前記上方に仮定した場合の非常灯の照度、効果の減殺に比して、より小さいものにすることができ、これに伴い、非常灯の使用時の照度を確保することができるから、これら主光源と非常用光源とに要求される床面照度に基いて、下方に非常用光源を配置することは、当業者であれば、当然に考慮する選択の範囲内のことといわねばならない。
また、原告は、更に他の根拠として、電球、ソケツト等の電器部品の光源による過熱、劣化の防止、電球の取付け、取外しの容易さ等に対する配慮の点をあげるが、これらの点も、各光源の大きさ、形状、取付方法、相互の間隔などを適宜設定することにより解決することができる事項であるし、本願考案の実用新案登録請求の範囲をみても、これらの点を解決するための特定の構成を規定し、もしくは前提としているわけではない。したがつて、いずれにしても、原告のあげる諸点は、推考困難の根拠とすることはできない。
そして、器具本体を遮光性のものとすることも、床面照度、照明デザイン等から必要に応じ任意に選択考慮されうる事項であつて、この点に格別の考案は認められない。
そうすると、この点に関する原告の主張は、採用することができない。
2 原告は、本願考案について、その作用効果の顕著さをあげる。しかしながら、平常時におけるダウンライトとしての所望の配光の設定、非常灯の照度の確保及びこれに伴う光源灯の設置の位置・数など、原告のいわゆる各効果は、前記認定から明らかなとおり、その構成の選択に伴い、容易に予期できた範囲内の事項ないし自明のことという外はなく、本願考案の進歩性を肯認する根拠とすることはできないから、この点に関する原告の主張も採用することはできない。
そうすると、原告の主張はいずれも理由がなく、本件審決を違法としてその取消を求める本訴請求は、失当として棄却すべきものである。
〔編註〕本願考案の要旨は左のとおりである。
下端に開口部を有する筒形の遮光性本体と、この本体の内部に装着され平常時に点灯する主光源と、前記本体に上記主光源の下方に装着され主光源の電源の切れた非常時に点灯する非常用光源とを備えたことを特徴とするダウンライト。